本校初の“シンポジウム形式”での授業を行いました。

“シンポジウム形式”での授業の様子

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 去る12月1日(金曜)に、2年生がシンポジウム形式での授業を行いました。これは、昨年4月から適用されている新カリキュラムの主旨に基づき新たに導入した「領域横断授業」の中のひとつ『終末期を生きる人々への看護』で実施したものです。

 本校では、新カリキュラムの運用にあたりディプロマポリシー・カリキュラムポリシー・アドミッションポリシーを作成しました。そのうちの1つ、カリキュラムポリシーは、「教育課程の編成や授業科目の内容および方法についての基本的な考え方・方針を示すもの」とされており、本校では11のポリシーを掲げ教育にあたっています。そのポリシーにそって本校では、学生の能動的な学びを支援するためのアクティブラーニングを積極的に取り入れています。

 そこで今回『終末期を生きる人々への看護』の授業を、本校初となる“シンポジウム形式”で行いました。1つのテーマについて討議するスタイルはいろいろありますが、今回シンポジウムを選んだのは、「さまざまな立場や着眼点から意見を聞くことができるのがシンポジウムのメリットなので、シンポジストと聴衆(学生)との討論を通して、終末期を生きる人々を多角的に理解する視点を育ててほしい。」と考えたことによります。

 シンポジウムのテーマは『エンドオブライフケアにおけるACPの重要性を考える~心不全の認知症高齢者の意思決定を探る~』とし、4名のシンポジストが意見を発表しました。シンポジストには日本海総合病院の緩和ケア認定看護師の方にもご参加いただき、医療の現場の実態と介入例などをお話しいただきました。

 4名のシンポジストと論題は次のとおりです。

  1. 「心不全を患う家族の介護者の立場で考える」…本校教員
  2. 「孫の立場で考える」…学生Aグループ7名
  3. 「看護学生の立場で考える」…学生Bグループ6名
  4. 「医療の現場で支援する立場から」…日本海総合病院緩和ケア認定看護師

 このシンポジウムを終え、認定看護師の方からは「これをきっかけに家に帰ってから家族と話すきっかけになり『人生会議』に関心を寄せられたらいいですね。」とのコメントを頂戴しました。

 また、学生からは以下のような感想・意見がありました。

  • ACPは繰り返し行うことや、看護師はどのようなことに配慮して関わっているのかを詳しく知ることができ、とても勉強になった。
  • 看護学生の視点だけでなく、多角的に考えを深められたのでよかった。
  • 認知症は一見すると意思決定が困難に思えるが、根気強くACPについて説明し、話し合いを繰り返しながら尊厳をもって暮らしていくことの重要性について学ぶことができた。
  • シンポジウムというものを最初は知らなかったが、1つの事例について様々な視点から考えることで、その人が望む最期を迎える準備ができたり、生活を続けられるように支援を考えていけるのだと分かった。
  • 支えていく家族の気持ちや周りの対応も知れた。自分たちで授業を作り上げるのは難しいと思った。
  • 認定看護師の先生から、臨床でのお話しをきかせていただくことができよかった。
  • ACPの重要性と本人へのアプローチの方法などを学ぶことができた。
  • ACPの重要性を理解できたため、家族と話し合ってみようと思った。ACPを行った事例の方が、私の死への向かい方に合っていたと思ったので、将来も何度も家族と話していこうと思った。

 新カリキュラムは昨年4月から運用されていますので、現2年生は「新カリ1期生」です。この授業は2年次後期に配置されているため、私たち教員にとっても初めての授業となります。領域横断授業なので複数の教員が専門領域担当の立場で授業にかかわり、学習目標の到達をめざしています。その中で、今回「本校初」となるシンポジウム形式を取り入れたことで、対話を重視した能動的な学習を促進できたものと考えます。今後、学習目標の到達度や学習成果などを評価し、より効果的な授業構築を目指していくことが私たち教員の役割と再認識しました。

2023年12月6日
酒田市立酒田看護専門学校
副校長 渡會睦美

※ACP…アドバンス・ケア・プランニング(ACP)のこと。
人生の最終段階で受ける医療やケアなどについて、患者本人と家族などの身近な人、医療従事者などが事前に繰り返し話し合う取り組みのことです。
2018年には、厚生労働省において“人生会議”という愛称が付けられ、現在もその普及啓発活動が盛んに行われています。

引用:「メディカル・ノート」https://medicalnote.jp/diseases